生存者バイヤス【安治久志】

2026.09/01

これで治った!」成功例だけを信じていませんか?

「このストレッチで腰痛が治りました」

「毎日スクワットをしたら膝が楽になりました」

「このツボを押したら、しびれがなくなりました」

 

SNSやYouTubeを見ていると、こうした情報をたくさん見かけます。

もちろん、本当にそれで体が楽になった人もいるでしょう。

 

 

でも、ここで一つ考えてほしいことがあります。

同じことをやって、変わらなかった人はどこにいるのでしょうか?

 

今日は「生存者バイヤス」という考え方から、

整体や健康情報の見方についてお話しします。

 

第二次世界大戦で実際に問題になった「爆撃機」の話

第二次世界大戦中、戦闘から帰還した爆撃機を調べると、

機体のさまざまな場所に弾痕が残っていました。

 

そこで、

「弾がたくさん当たっている場所を補強しよう」

という考えが出ます。

一見すると当然ですよね。

 

ところが、統計学者エイブラハム・ウォールドは違う見方をしました。

 

 

注目したのは、

弾痕がある場所ではなく、

弾痕が少ない場所でした。

 

なぜなのか?

 

 

目の前にあるのは、

撃たれても帰ってこられた飛行機だけだからです。

 

 

逆に、重要な部分を撃たれた飛行機は帰ってきていない。

だから、その機体を調べることができません。

 

 

つまり、

「目の前に残っているデータだけで判断すると、

本当に重要なものを見落とすことがある」

ということです。

 

 

これが「生存者バイアス」の有名な例です。

 

 

これ、整体でも起きていませんか?

例えばYouTubeで、

「腰痛にはこのストレッチ!」

という動画があったとします。

 

 

コメント欄を見ると、

「先生!これをやったら楽になりました!」

「長年の腰痛が軽くなりました!」

「毎日続けています!」

こんなコメントが並んでいる。

 

 

すると、

「やっぱり、このストレッチは腰痛に効くんだ」

と思いますよね。

でも、ちょっと待ってください。

 

 

同じ動画を見て、

やったけど変わらなかった人。

 

 

途中でやめた人。

自分には合わなかった人。

逆に痛くなってやめた人。

そういう人たちは、わざわざコメントを書かないかもしれません。

すると私たちの目には、

「うまくいった人」ばかりが見えるようになります。

 

 

これまで私自身、「足りないものばかりを見ていると、

そればかりが目に入る」という“フィルター”の話をしてきました。

 

健康情報でも同じように、

「何を見て、何を見落としているのか」

を考えることが大切です。

 

 

「効いた人がいる」と「あなたにも効く」は別

ここを間違えてはいけません。

 

 

私は、

ストレッチがダメだと言っているわけでも、

筋トレがダメだと言っているわけでもありません。

整体もツボもセルフケアも同じです。

 

 

大切なのは、

「効いた人がいる」=「あなたにもそれが正解」ではない

ということです。

 

 

例えば同じ「朝起きると腰が痛い」という人でも、

ある人は股関節が動きにくいかもしれない。

ある人は足首が硬いかもしれない。

ある人は長時間同じ姿勢でいることが影響しているかもしれない。

 

 

体の状態は一人ひとり違います。

だから、

「腰痛にはこれ」

「膝痛にはこれ」

「坐骨神経痛にはこれ」

と症状名だけで答えを決めてしまうと、

その人自身の体が置き去りになってしまう。

 

 

施術する側にも「生存者バイアス」は起こる

これは施術を受ける側だけの話ではありません。

 

 

むしろ、私たち施術する側こそ気をつける必要があります。

例えば、新しく覚えた技術を10人に使ったとします。

そのうち3人が劇的に変わった。

 

 

「先生、すごい!」

「めちゃくちゃ楽です!」

そう言われると、うれしいですよね。

 

 

すると、

「この技術は効く!」

と思いたくなる。

 

 

でも本当に成長するために見るべきなのは、

その3人だけではありません。

変わらなかった7人は、なぜ変わらなかったのか?

私は、こっちの方が大事だと思っています。

 

 

成功例より「うまくいかなかった例」が教えてくれること

例えば、

同じ腰痛なのに、

Aさんには変化が出た。

Bさんにはほとんど変化が出なかった。

そこで、

「Bさんには効かなかったな」

で終わらせるのではなく、

違いを見る。

足首はどうだったのか。

股関節はどうだったのか。

呼吸はどうだったのか。

どんな動作で痛かったのか。

施術前と施術後で何が変わったのか。

こうやって見ていくと、

技術の正解探しから、その人の体を見る施術へ変わっていきます。

 

 

「何が効く?」より「なぜこの人には効いた?」

私は、この問いが大事だと思っています。

 

 

「何が効くんですか?」

ではなく、

「なぜ、この人には効いたんだろう?」

です。

 

 

この問いに変えるだけで、見えるものが変わります。

これは技術を否定する考えではありません。

むしろ逆です。

 

 

技術をもっと生かすために、

技術だけで人を見ない。

という考え方です。

学ぶことも同じです。

 

 

学ぶこと自体が目的ではなく、

何を見るのか、どちらへ進むのかという「方向を決める材料」

として使う。これまで話してきた「整えてから動く」という考え方にもつながっています。

 

「治った!」という情報ほど、一度立ち止まって考える

今はSNSを開けば、

「これだけで改善!」

「たった30秒!」

「○○するだけ!」

という情報が次々に出てきます。

でも、私が皆さんに持ってほしいのは、

「本当かな?」

と全部疑う姿勢ではありません。

 

 

そうではなく、

「この情報の後ろに、見えていない人はいないかな?」

と考える習慣です。

 

 

治った人がいる。

それは一つの情報。

変わらなかった人もいる。

それも一つの情報。

 

そして、

自分の体は今どうなっているのか。

ここまで見て、初めて自分に必要なものを考えられるのだと思います。

 

 

整う整体学が大切にしたいこと

だから私は、

「この技術が正解です」

「このセルフケアをすれば全員良くなります」

ということを伝えたいわけではありません。

大切なのは、

自分では気づけなかった“体の現在地”を知ること。

そして、

自分の体がどうすれば変わるのかを知ること。

です。

同じセルフケアをやって、

変わった。

それなら、その変化は体からの情報です。

変わらなかった。

それもまた、体からの大切な情報です。

「効かなかった=失敗」

ではありません。

変わらなかったことにも、次に見るべき場所を教えてくれるヒントがあります。

 

 

痛い場所だけを見るのも同じかもしれない

爆撃機の話に戻ります。

 

 

人はつい、

弾痕がある場所

を見ます。

 

 

体も同じです。

腰が痛い。

だから腰を見る。

 

 

膝が痛い。

だから膝を見る。

 

 

首が痛い。

だから首を見る。

もちろん痛い場所を見ることは必要です。

 

 

でも、

痛みが出ていない場所に原因や

負担のヒントが隠れていることもあります。

 

 

腰を守るために股関節の動きが変わっているかもしれない。

膝をかばって足首の使い方が変わっているかもしれない。

首が頑張らなければならない体の使い方になっているかもしれない。

 

 

だから僕は、

「痛い場所=悪い場所」とだけと最初から決めない。

体全体のつながりを見ていきます。

 

「成功例を集める」から「違いを見る」へ

私たちはどうしても、

「治った人」

「成功した人」

「結果が出た方法」

に目を奪われます。

 

 

でも本当に大切なのは、

成功例をそのまま真似することではなく、

成功した人と、うまくいかなかった人の“違い”を見ること。

なのかもしれません。

 

 

これは健康だけではなく、

仕事でも、

商売でも、

人生でも同じだと思います。

目立つ成功者だけを見て、

「これをやれば自分も成功する」

と考えるのではなく、

見えていない失敗例にも目を向ける。

 

 

そして最後は、

自分の現在地を見る。

 

 

整う整体学とは「正解を教えること」ではない

「腰痛ならこれ」

「肩こりならこれ」

そんな正解を一つ増やすことが、整う整体学ではありません。

私が伝えていきたいのは、

自分の体を観察して、自分の体の答えを見つけられるようになること。

成功した人だけを見ない。

変わらなかった人も見る。

痛い場所だけを見ない。

その周りも見る。

結果だけを見ない。

その結果が起きる前の状態を見る。

そうすると、

今まで見えなかったものが見えてきます。

「何が効くのか?」から、
「今、この体はどうなっているのか?」へ。

それが、私がこれから伝えていきたい

「整う整体学」

です。

炭酸整体では技術をお伝えするのではなく

先生方の施術効果の拡張をお伝えしています。

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