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2026.08/04
触る前に患者さんを見ることが大切な理由【安治久志】
2026.08/04

患者さんが来院する。
症状を聞く。
そして、すぐに施術を始める。
「少しでも早く楽にしてあげたい」
「時間いっぱい施術してあげたい」
「きちんと結果を出して帰ってもらいたい」
そう考えるのは、施術家として自然なことです。
むしろ、真面目で患者さん思いの先生ほど、早く施術を始めようとします。
しかし、15年以上にわたり多くの患者さんを診てきた中で、
私はあることに気づきました。
それは、
施術を急ぐほど、患者さんの本当の状態が見えなくなることがある
ということです。
大切なのは、早く触ることではありません。
施術を始める前に、目の前の患者さんがどのような状態なのかを丁寧に見ることです。
症状を聞いた瞬間に、答えを決めていませんか?
例えば、患者さんから
「腰が痛いです」
と言われたとします。
その瞬間、先生の頭の中には、さまざまな原因が浮かぶのではないでしょうか。
- 骨盤の歪み
- 股関節の硬さ
- 大腰筋の緊張
- お尻の筋肉
- 足首の動き
- 神経の問題
もちろん、仮説を立てることは大切です。
しかし注意したいのは、仮説をそのまま答えにしてしまうことです。
「腰痛だから骨盤だ」
「肩が上がらないから肩甲骨だ」
「坐骨神経痛だから腰やお尻だ」
このように決めつけた瞬間、目の前の患者さんを見るのではなく、
自分が持っている知識の中に患者さんを当てはめ始めてしまいます。
すると、本来見るべきものが見えなくなります。
患者さんの表情。
呼吸。
声のトーン。
動作。
不安の強さ。
睡眠状態。
生活背景。
同じ症状であっても、患者さんの状態は一人ひとり違います。
同じ腰痛でも、体の状態は全く違う
同じ「腰痛」の患者さんが二人いたとしても、体の状態が同じとは限りません。
一人目は、
- よく眠れている
- 食欲がある
- 表情が明るい
- 呼吸が深い
- 体に触れても力が抜けている
もう一人は、
- 数日間よく眠れていない
- 仕事や家庭の不安を抱えている
- 呼吸が浅い
- 表情が硬い
- 体に触れると全身に力が入る
- 「このまま歩けなくなるのでは」と怖がっている
症状名は同じ腰痛です。
しかし、施術を受け取る体の状態は全く違います。
一人目の患者さんは、軽い刺激でも変化するかもしれません。
一方、不安や緊張が強い患者さんは、
いきなり強い刺激を入れると、体がさらに守ろうとすることがあります。
先生は一生懸命に緩めようとする。
患者さんの体は、一生懸命に固めようとする。
これでは、先生と患者さんの体が綱引きをしているようなものです。
施術量を増やしているのに、かえって結果が出にくくなることもあります。
「早く治したい」が先生の焦りに変わる
施術を急ぐ先生は、決して患者さんを大切にしていないわけではありません。
むしろ、
「何とかしてあげたい」
という思いが強い先生ほど急ぎます。
しかし、その思いがいつの間にか、
「早く結果を出さなければいけない」
という先生側の焦りに変わることがあります。
変化が少ない。
焦る。
刺激を増やす。
違う技術を足す。
説明を増やす。
さらに動かす。
それでも変化しないと、また焦る。
この時、先生の意識は患者さんから離れています。
「今、患者さんは何を感じているのか」ではなく、
「自分は結果を出せるのか」
に意識が向いてしまっているのです。
そして、この焦りは患者さんにも伝わります。
患者さんは、
「私の体はそんなに悪いのかな」
「先生も困っているのかな」
「自分は治りにくいのかな」
と、さらに不安になります。
不安が強くなると、体はまた守ろうとします。
つまり、先生が結果を急ぐことで、患者さんの体が結果を出しにくい状態になることもあるのです。
結果が出る先生は、患者さんが来院してすぐに施術を始めるわけではありません。
触る前から、さまざまな情報を見ています。
1.歩き方
患者さんが入口からどのように歩いてきたのか。
歩幅はどうか。
左右差はあるか。
どちらかの足をかばっていないか。
体を傾けていないか。
ベッドで検査をする前から、自然な動きの中に多くの情報があります。
2.椅子に座る動作
椅子に座る時に、どこをかばっているのか。
手をついているのか。
膝を怖がっているのか。
股関節を曲げるのを避けているのか。
患者さん本人が自覚していない負担が、日常動作に表れていることがあります。
3.表情
痛みを我慢しているのか。
不安が強いのか。
諦めているのか。
怒りを抱えているのか。
表情は、言葉よりも早く体の状態を教えてくれます。
4.呼吸
呼吸が浅い。
肩が上がっている。
話している途中で息を止めている。
吐く息が短い。
このような状態では、体に力が入りやすくなります。
いきなり強い刺激を入れる前に、呼吸が少し深くなる状態を作ることが必要かもしれません。
5.声のトーンや話す速さ
早口になっている。
同じことを何度も繰り返す。
声が小さい。
質問にすぐ答えられない。
言葉の内容だけでなく、話し方にも不安や緊張が表れます。
6.施術を受け入れられる状態か
最も大切なのは、患者さんの体が
「触られても大丈夫」
「動かされても大丈夫」
「変わっても大丈夫」
という状態になっているかどうかです。
結果が出る先生は、症状だけではなく、患者さんが施術を受け取れる状態かを見ています。
多くの先生は、手を動かしている時間だけを施術だと考えます。
押す。
揉む。
動かす。
伸ばす。
調整する。
しかし私は、観察している時間も施術だと考えています。
患者さんの話を聞く時間。
呼吸が変わるのを待つ時間。
軽く触れて反応を見る時間。
一度動かして、変化を確認する時間。
患者さんに
「今、どう感じますか?」
と尋ねる時間。
これらは何もしていない時間ではありません。
その後の施術の方向を決める、とても重要な時間です。
料理に例えるなら、下ごしらえのようなものです。
食材の状態を見ず、フライパンも温めず、いきなり火を入れても、うまく仕上がりません。
施術も同じです。
何をするかだけではなく、どの状態で、どの順番で行うかが大切なのです。
炭酸整体が大切にしている「触る前に整える」
炭酸整体というと、
「炭酸を吹きかけて施術する方法」
と思われることがあります。
もちろん、炭酸を使います。
しかし、本当に伝えたいのは、炭酸そのものだけではありません。
炭酸整体の根本には、
「触る前に整える」
という考え方があります。
いきなり押す。
いきなり揉む。
いきなり動かす。
その前に、体が刺激を受け入れられる状態を作る。
どれだけ良い技術があっても、患者さんの体が緊張し、
守り、刺激を受け取れない状態では、施術は入りにくくなります。
反対に、体の状態が整えば、軽い刺激でも変化することがあります。
炭酸を使うこと自体が目的なのではありません。
患者さんの体が、自分から変化を起こしやすい条件を整えること
が目的です。
炭酸整体は、炭酸という方法を通して、
- 体の反応を見る
- 無理に変えようとしない
- 強い刺激に頼らない
- 施術を受け入れやすい状態を先に作る
という施術の考え方を大切にしています。
炭酸整体では技術だけではなく大切な考え方をお伝えする実践のコミュニティーです
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